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【特別企画 共生社会を目指して】岡山県精神保健福祉士協会について

岡山県精神保健福祉士協会
会長 河合 宏

岡山県精神保健福祉士協会について-1

「岡山こころの健康 第64号」の発行にあたり

 「岡山こころの健康 第64号」の発行にあたり、寄稿の機会を頂戴し誠にありがとうございます。また、平素より岡山県精神保健福祉士協会の活動に格別のご理解ご協力を賜り、誠にありがとうございます。

 「一般社団法人 岡山県精神保健福祉協会」と「岡山県精神保健福祉『士』協会」とは、一文字『士』があるかどうかの違いです。色々と検索した際に少し紛らわしいかもしれません。今回は、少しでも皆様の身近な存在となれるよう、精神保健福祉士、岡山県精神保健福祉士協会についてご紹介させていただきます。

精神保健福祉士について

 まず、精神保健福祉士についてご紹介させていただきます。精神保健福祉士とは、1997年に誕生した精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格です。それ以前には、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)という名称で、1950年代から精神科医療機関等で社会福祉の専門職として働いていました。岡山でも国家資格化される前から、多くの精神科ソーシャルワーカー(PSW)が精神科病院を中心に活躍していました。現在のように社会福祉制度が充分ではなく、少なくなかったであろう困難を、当事者の方やご家族、支援者の方と協働・連携しながら解決し地域での生活を支えてきました。

 精神保健福祉士は医療職ではなく、生活の視点を持った福祉職であり、社会福祉学を学問的基盤としています。課題であった精神科病院への長期入院の解消こそ、精神保健福祉士としての命題であると理解しています。また、こころの時代と呼ばれる21世紀においては、広く国民のメンタルヘルスに寄与することが求められていると感じています。時代の変遷とともに生活課題も複雑多様化し、精神保健福祉士の呼称や英語表記も、Psychiatric(精神医学の)ソーシャルワーカーから、Mental Health(メンタルヘルスの)ソーシャルワーカーへと変わりつつあります。たとえ呼称や英語表記が変わっても、当事者の方の地域生活を支え、他職種と連携し共に課題を解決するという姿勢は変わりません。精神保健福祉士は、当事者が望む生活が送れることを強く願い協働します。

岡山県精神保健福祉士協会について

 次に、岡山県精神保健福祉士協会についてご紹介させていただきます。岡山県精神保健福祉士協会は、1976年「岡山PSW研究会」として発足し現在へと至っています。岡山県内(岡山県内に職場あるいは住所がある)の精神保健福祉士が加入する任意団体で、現在約400名の会員で構成されています。会員の所属機関は多岐に渡り、医療機関、福祉サービス事業所、行政、司法施設、教育機関、企業などで働いています。普段はそれぞれの所属機関や立場でそれぞれの役割を担っており、単に業務として仕事をこなすだけでなくソーシャルワーカーとして地域課題へ目を向け、ソーシャルアクションを意識した実践を心掛けています。岡山県精神保健福祉士協会として、当事者、ご家族、関係団体と連携しながら、誰もが暮らしやすい社会の実現に努めて参ります。

岡山県精神保健福祉士協会が取り組む事業について

 つづいて、岡山県精神保健福祉士協会が取り組む事業についてご紹介させていただきます。理事会の開催、会員向け機関誌の発行、研修、ソーシャルワーカーデーイベント、社会的要請に応じた会員派遣、関連団体の実施する事業への後援などを行っています。

 特に研修は事業の大きな柱です。日々の相談に向き合うために自身の研鑽は不可欠で、また、新しい知見の習得も必要です。基礎コース研修では入職3年目までの会員を対象とし、研鑽だけでなく精神保健福祉士同士のつながりも意図して企画しております。また、会員全体研修では、専門性の再確認や新たな知識を得る機会として企画し、近年では、ヤングケアラー、生活保護裁判、相模原事件などを学びました。講義だけでなく聴講した後にはグループワークを行い、それぞれが咀嚼し日々の実践に活かせるような工夫もしています。

 また、関係機関・団体・事業への会員派遣として、きばらしふぇすてぃばるを共催する「岡山県精神保健推進委員会」や、「岡山県精神障害者地域移行推進協議会」「岡山市介護認定審査会」「岡山市精神医療審査会」「災害派遣福祉チーム推進会議」「岡山障害者雇用企業研究会」など、約25の事業に携わっています。近年は他団体と連携する事業も増え、職域の拡大と共に身近な生活課題が多岐に渡ることを実感しています。

物理的な距離は保っても、心理的な距離は離れないように。

 コロナ禍において、日々の実践、岡山県精神保健福祉士協会の行う事業などで様々な不自由を感じています。それ以上に、当事者の方々だけでなく、多くの方が生活の困難さを抱えていることと思います。生活支援は対面が基本で、リモートが定着しても解決しないことが多々あります。人とのかかわりを大切にし、丁寧に希望や困りごとに耳を傾け、心情に寄り添ってきた精神保健福祉士も、皆さまと同じように少なからず息苦しさを感じています。

 国民の生活も「新しい生活様式」なる表現のもと、人との距離を一定に保つことが推奨されるような状況になってしまいました。物理的な距離は保っても、心理的な距離は離れないようにしたいと強く思います。このような時だからこそ、心身ともに健康であること、変わらない日々が続くことのありがたさに気付けたのかも知れません。

 先行きの見通しが立ちにくい状況はあまり健康的ではないと思います。ご自身の不安や精神的な違和感に気付いた時に、頼れる存在として身近な精神保健福祉士の顔が浮かぶでしょうか。誰かの希望や不安に寄り添え信頼される精神保健福祉士でありたい、岡山県精神保健福祉士協会でありたいと願っています。

 精神保健福祉士の存在を、岡山県精神保健福祉士協会の存在を知っていただき、必要に応じて活用くだされば幸いです。