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【特別企画 共生社会を目指して】精神疾患を抱える方と共に活動してきた普及啓発

 昭和62年(1987年) 「新見市精神障害者家族会 わかば会」が、新見市の助成と保健所等の指導や援助を受けて、「共同作業所つつじ憩の家」を開設し、運営してこられました。開所当時から、精神障害者を対象とした作業所で、新見市で精神疾患を抱える方々の唯一の居場所として、日中活動の場として、当事者同士の交流の場として、家族会が運営してこられました。

 平成16年7月法人格を取得し、「共同作業所つつじ憩の家」の運営は、家族会からNPO法人ハートフル・あしんに移行し、家族会はハートフル・あしんと共に、互いに協力しながら、目的達成のために動き出しました。また、昭和51年に発足した「回復者クラブつつじの会」(精神疾患を抱える方の当事者会)も家族会と一緒に作業所活動をしてきました。

 NPO法人を設立するきっかけになったのは、当時のスタッフが「精神障害者生活支援センター」の必要性を強く感じていたことからでした。精神疾患を抱える方々からの「作業所以外の居場所も欲しい」という声を拾い上げ、その必要性を強く感じた家族会は新見市へセンター設立の要望をしてきました。そんな中、平成18年(2006年)障害者自立支援法が施行され、3障害対象となる新見市直営の「新見市障害者地域活動支援センター」(Ⅰ型)が設立されました。「共同作業所つつじ憩の家」は、地域活動支援センターⅢ型に移行し、Ⅰ型の2階での活動が始まりました。これまで精神疾患を抱える方々の集いの場が、障害関係なく利用できることとなり、制度も変わってきましたが、まだまだ精神疾患や精神障害について知られていないことも多く、偏見も見られます。私たちNPO法人ハートフル・あしんの活動の目的は、精神保健福祉に関する普及啓発や精神障害者の社会参加や社会進出です。家族会や当事者の活動支援などはもちろんの事、その目的を達成するために様々な活動を行ってきました。

 その中でも大きな事業を2つ紹介します。

精神疾患を抱える方と共に活動してきた普及啓発-1
田淵さんによる講演の様子

 一つは、平成17年から開催してきた、「ハートフルフェスティバル」(平成24年に名称を「新見こころの健康フェスタ」と変更)です。当事者の体験発表や著名人や精神科医師による講演会等で障害の理解を深めたり、精神疾患についての勉強をしたりしてきました。また、市内の障害者団体やボランティア団体による芸能を披露したり、参加者で音楽を通して交流を深めながら、精神疾患を抱える方々の事を知っていただいたり、ご本人や病気の事を考えるきっかけにしてきました。

精神疾患を抱える方と共に活動してきた普及啓発-2
マインドこころさんとの交流

 近年では、精神障害や発達障害についてかなり周知されてきており、あらゆるところで講演や研修が行われています。新見市内でも、障害についての理解を深めるためのイベント「福祉フォーラム」が開催されるようになりました。しかし、精神保健に特化した普及啓発事業の必要性を強く感じており、「ハートフルフェスティバル」でご協力いただいた市内の民間機関の皆様と、平成30年「新見こころの健康を考える会」を発足し、普及啓発のための事業や構成員の研修の場として活動をしております。コロナ禍で、中々事業ができませんが、家族会の活動に参加したり、福祉フォーラムの精神保健ブースにご協力いただいたりしています。最近では、「こころの病を学ぶ授業」について、田淵泰子さんに講演をしていただいたり、豪雨災害を経験された真備地域の精神疾患を抱える方々(マインドこころさん)の体験発表と音楽での交流などがあります。小さな活動や個人の活動の輪が広がり、理解を深めることになるのだと信じ、地道な活動を継続しているところです。

精神疾患を抱える方と共に活動してきた普及啓発-3
ソフトバレーボール大会 in にいみの開会式の様子

 もう一つは、精神障害者のスポーツ支援です。精神疾患を抱える人がスポーツをすることは、とても大きな意味を持つと考えています。私たちは、新見市内で「CLUBつつじ」というバレーボールチームで活動を続けています。私が作業所に入職して2年ほど経った、平成16年春、作業所あてに県大会のご案内をいただいたことで、チームを結成しました。ほとんどが未経験者でボール一つで始めたバレーですが、参加者の生き生きとした姿が印象的でした。平成17年(2005年)岡山国体の年、そのあとの全国障害者スポーツ大会の出場権を争った県大会(開催県なので出場権は2枠)の準決勝で敗れ、不完全燃焼に終わったという選手の声を受け、その年の8月にハートフル・あしんが主催で新見大会を開催し、継続しているのが、「ソフトバレーボール大会inにいみ」です。当初は、県内から10チームくらいの参加がありました。審判など皆さんがボランティアです。ラインズマンや得点係などは、地元の小中高生のバレー部の部員たちがお手伝いをしてくれます。子供達にとって、大会に出る選手は障害など関係なく、バレーを楽しんでいる普通の大人です。その後も毎年開催してきましたが、近年では参加チームも少なくなってしまいましたが、ボランティアの方と参加者がチームを作って楽しんでいます。これこそ目的達成の原点かもしれません。開催の目的は、「精神保健福祉の普及啓発!精神障害者の社会参加と社会進出!」しかし、この大会も平成30年の西日本豪雨災害や翌年の新見豪雨災害が相次ぎ、そしてコロナ禍となり、何年も大会はできていません。みんなの笑顔が集まる大会が出来る日が早く来てほしいものです。

 また、県大会にはバレーの他に卓球やフライングディスクなどの競技に参加し、大きな舞台に立つことで自分に自信を取り戻したり、仲間が出来たりします。私達は元気になっていくためのお手伝いです。もちろん、スポーツをすることで悩んだり挫折したりすることもありますが、仲間がいることで乗り越えられた人も沢山います。また、障害の有無に関わらず多くの人との交流は、人として成長させてくれるものです。CLUBつつじのメンバーの数名は、岡山県選抜にも参加し、中四国ブロック予選会や全国大会の出場を経験しました。県外の方々との交流は学ぶことも多く、青春時代を病院で過ごした方にとって、ちょっとした小旅行であり、青春の思い出の1ページになったようです。

精神疾患を抱える方と共に活動してきた普及啓発-4

 共同作業所つつじ憩の家(Ⅲ型)は新見市の地域性からとても大切な資源で、利用目的は様々です。居場所として、生活リズムを作るため、人に慣れるため、福祉サービスや就職に繋がるまでのつなぎ…など、必要とする人がいる限り、お手伝いさせていただきたいと考えています。私共ハートフル・あしんの理念は、人格と個性が尊重され、障害者が安心して暮らせる地域社会を実現することです。少しでもお役に立てればと思って活動していますが、利用者やご家族の皆さんから元気をいただいている方が多いかもしれませんね。

NPO法人ハートフル・あしん 妻木陽子