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岡山県断酒新生会結成58年の歩み

 第61回岡山県精神保健福祉大会にて、岡山県断酒新生会の藤川 泰三理事長が、岡山県保健福祉部長賞を受けました。今回も含めて、岡山県の断酒会の多くの方が岡山県精神保健福祉協会長賞を受けており、岡山県における酒害問題の克服のために努力していただいています。

 藤川理事長に岡山県断酒新生会の歴史を記述していただきました。

山陽の一角に本格的断酒会発足 岡山県断酒新生会

岡山県断酒新生会

 去る1月29日午後2時、岡山市労働会館3階会議室にて、山陽地区最初の本格的断酒会が生まれた。

 誕生までの経緯は2つの路線から到着した。すなわち、酒害者(断酒実行3ヶ年)の山方辰三郎さんの献身的努力と、岡山市慈圭病院の積極的支援に端を発したものといえる。

 下司博士のいわゆる「下司構想」をそのままに、病院―断酒会―社会の公式路線をいったものである。慈圭病院側は、院長先生をはじめ大重先生、職員の井上、堀家さん等が、アル中患者が退職後にしばしば元の木阿弥となり、敗惨の姿を再度病院に現し、そのため家族の人達の不幸を見るに忍びず、何とか、退院後アフターケアに尽力していた矢先、断酒会の必要性を痛感されたのである。

 また山方路線の場合は、彼は数年前岡山禁酒会に入会して断酒の試練の如何に厳しいものであるかを身を似て体験された。その結果彼は岡山禁酒会の先輩に幾度か、本格的な断酒実践組織への体質改善を進言したけれども、人それぞれの考えがあるように団体にも複雑なもののあることは例外でないのである。

 山方氏は一大決意をして本格的断酒道場である断酒会組織へ踏切った。この勇気は高く評価され、称讃されるべきであろう。

 たちまち数名の酒害者は山方さんの路線に結集した。

 そういう経過をたどって、29日の結成式となったのである。

 式は河田さん(酒害者)の司会の下に進行、山方さんから経過の報告、ついで各会員の自己紹介があって、規約等諸般の事項がすらすらと可決され、それより全断連松村会長の祝辞、鳥取県断酒会高畑さん、香川県の牟礼さん、慈圭病院の井上さん等から祝福の言葉が送られ、各方面からの祝電、メッセージの披露があってなごやかなムードの裡にいつの間にか閉会予定の午後5時30分となり、全員断酒歌を合唱、断酒を誓う連鎖握手にて小雪のちらつく街へ断酒の決意も新たに三々五々と家路についた。

 なおこの結成式には慈圭病院のご好意とご理解の下に、入院中の患者さん及びその家族の方達も出席されて、支援態勢を現実に示されたことは異色であった。

断酒新聞(発行人 下司孝麿) 昭和41年1月31日発行

自助組織「岡山県断酒新生会」の役割と目標

アルコール依存症者は全国で107万人。
そのうち医療に繋がる人は4.5%しかいない。
また、アルコール依存症者の予備群は、980万人と言われている。
なぜ、医療に繋がらないかは、アル中、アルコール依存症には未だに偏見がある。
また、アルコール依存症は孤立する病気であることがあげられる。
この病気の回復は、如何にして人間関係の中で回復することにかかっている。

自助組織(断酒会)の役割

医療に繋がった人を自助組織(断酒会)に繋がるところから始まります。
断酒会は巨大な家族のようなもの。
酒を止めるだけではなく、例会は心通じる場所であります。
同じ病気を持った似た者同士、例会に出席するとまた、あの人の顔がみえる。
など、打算なく人生を共に歩んでいく家族であり、その中で人間性の回復をしていく組織であります。
また、回復過程の人は、入会して来た人(酒害者)をどうにかしてあの人の酒を止めてあげたい。
人が上手くいっていたら、自分のことのように喜ぶ。利害関係なく人が集まる会であります。
例会は、体験談に始まり、体験談で終わります。
各々が自分の過去の酒害体験を掘り起こし体験談として発表し、また他の人の体験談を真剣に聞くことにより、アルコール依存症からの回復を目指します。

岡山県断酒新生会は「断酒の誓」を常に目標として、人間性の回復に努力しております。

断酒の誓

1、私たちは酒に対して無力であり、自分ひとりの力だけではどうにもならなかったことを認めます。
1、私たちは断酒例会に出席し、自分を率直に語ります。
1、私たちは酒害体験を掘り起こし、過去の過ちを素直に認めます。
1、私たちは自分を改革する努力をし、新しい人生を創ります。
1、私たちは家族はもとより、迷惑をかけた人たちに償いをします。
1、私たちは断酒の歓びを、酒害に悩む人たちに伝えます。

岡山県断酒新生会の目標

 岡山県断酒新生会の目的は、定款に定められた「岡山県内の酒害に悩む人たちに断酒を勧め、自発的決意による断酒を実行する者を支援し、断酒によって明るい人生の建設をめざすとともに、酒害に関する啓発運動をおこない酒害の及ぼす社会悪の防止につとめ、広く社会福祉に貢献することを目的とする。」すなわち、酒害者救済が目的とされた団体である。

 58年の時が過ぎ、時代が変わると共に、アルコール医療も、「減酒療法」も医療の中に取り入れられ、薬も処方薬として出来ていくなか、断酒新生会の目標は変わらない。時代が変わるなか、58年前の結成当時の原点回帰を目指している。昨年8月に開催された「SBIRTS(註)普及促進セミナーin岡山」である。これは、厚労省の支援事業で「アルコール依存症の早期発見・早期対応、継続支援モデル事業」として行われたものである。スクリーニングの窓口拡充と受診後の地域資源による回復施策として登場したものである。

 「SBIRTS」は永い歴史の長い歴史のなかで断酒会員が実践したことである。もう一度、原点に立ち返て、自助組織(断酒会)が謙虚になり地域行政や地域医療の連携の輪を広め、さらに絆を強めてほしいということである。

 「人に尽くして、己が救われる」

 この言葉を常に忘れず、酒害者救済を進めて参ります。

 最後に、医療・行政の先生方、岡山県精神保健福祉協会の皆様には大変お世話になっております。今後とも岡山県断酒新生会を何卒宜しくお願いいたします。

特定非営利活動法人岡山県断酒新生会 
理事長 藤川 泰三

 註 「SBIRTS」別記紹介しています。